珈琲とmilkのパーセンテージ

苦かったり甘かったりするので無機質の筆や箱で切り取ってみる。

オリバー!-2021/10/10-

2021/10/10(日)ソワレ

シアターオーブ

 

<スタッフ>

原作:チャールズ・ディケンズ

脚本・作詞・作曲:ライオネル・バート

<キャスト>

フェイギン … 武田真治

ナンシー … 濱田めぐみ

ビル・サイクス … spi

 

オリバー・ツイスト … 小林佑玖

アートフル・ドジャー … 酒井禅功

ミスター・バンブル … 小浦一優芋洗坂係長

ミセス・コーニー … 鈴木ほのか

ミスター・サワベリー/ミスター・グリムウィグ … 鈴木壮麻

ミセス・サワベリー/ミセス・ベドウィン … 伊東えり

ミスター・ブラウンロウ … 小野寺昭

ベット … 植村理乃

ノア・クレイポール … 斎藤准一郎

シャーロット … 北川理恵

サリー婆さん … 河合篤子

ローズセラー … 青山郁代

ミルクメイド … 元榮菜摘

ストロベリーセラー … 飯田恵理香

ナイフグラインダー … 森山大輔

寮母 … 荒井小夜子

女主人 … 家塚敦子

店主 … 石川剛

クラウン … 蔵川晶祥

リングマスター … 小原和彦

メイド … 鈴木満梨奈

パーシー・スノッドグラス … 菊地まさはる

ストロングマン … 小林遼介

バレリーナ … 今野晶乃

騎兵 … 白山博基

エキセントリックダンサー … 高瀬育海

フェイギンのギャング団<ペッカム>

チャーリー・ベイツ …日暮誠志朗(ひぐらし せいしろう)
ディッパー … 福田学人(ふくだ がくと)
ハンドウォーカー … 山下光琉(やました ひかる)
スネイク … 河内奏人(こうち かなと)
キング … 花井 凛(はない りん)
キャプテン … 本田伊織(ほんだ いおり)
スティッチム …杉本大樹(すぎもと だいじゅ)
スパイダー … 高田夏都(たかた なつ)
キッパー … 平澤朔太朗(ひらさわ さくたろう)
ニッパー … 渡邉隼人(わたなべ はやと)

救貧院の子どもたち<メイフェア>

磯田虎太郎(いそだ こたろう)、市川裕貴(いちかわ ゆうき)、石倉 雫(いしくら しずく)、木村 心(きむら こころ)、黒川明美(くろかわ めいみ)、河本雪華(こうもと せっか)、鐘 美由希(しょう みゆき)、高澤悠斗(たかざわ はると)、土屋飛鳥(つちや あすか)、寺﨑柚空(てらさき ゆず)、平賀 晴(ひらが はる)、弘山真菜(ひろやま まな)、矢田陽輝(やだ はるき)

ブルズアイ … バウ

ミュージカル『オリバー!』いよいよ開幕!公開舞台稽古レポート 感激観劇レポ|おけぴネット より

 

ストーリー

物語の舞台はヴィクトリア朝イングランド

救貧院で食に満たされることのない暮らしを続けていた孤児のオリバーは、下働きに出された葬儀屋でひどい仕打ちを受ける。

逃げ出したオリバーがたどりついたのはロンドンの街。

彼はそこでフェイギンという老人が元締めを務めるコソ泥とスリの集団に取り込まれる。

スリの濡れ衣を着せられ、捕らえられたオリバーは、その被害者である親切な紳士ブラウンロウ氏に引き取られた。

アジトを知られることを恐れたフェイギンは、冷酷なビル・サイクスと心優しいナンシーを使ってオリバーを力ずくで連れ戻そうとたくらむ。

オリバーは本当の家族の愛を見つけることができるのだろうか―。

ミュージカル『オリバー!』

youtu.be

 

信じることの大切さ

信じることの大切さというのはオリバー!全体を通して信じることが出来ない人が出てきて信じていれば愛を知れたり、信じていれば仲間がいたりするように思えたからです。
愛はどこなの?オリバーは人を素直に信じるから大切にされて愛される。「愛はどこなの?」で歌われる愛は母の無条件の愛なのだろうから亡くなってしまった母から愛を直接感じられはしないけれど新たに出来た家族から愛を感じるのかもしれない。原作批評にあったオリバーは楽観主義者だから涙を誘うというのが私はしっくりきてます。オリバーの魅力は世の中が自分に優しくしてくれると信じられるところなのだと思う。
ビルはどう見ても人を信じていないからあれだけ愛してくれているナンシーの愛に気づいていながらも信じきれない臆病な人なのだと映ります。脅して言うことを聞いてもらう、そうやって毎回確認してナンシーの愛を感じていたのだと見ていて思います。ここからは推測だけどナンシーに自然に庇ってもらえるオリバー、自分(ビル)が脅しても戦おうとするナンシーに不器用ながら嫉妬しているような状態なのかもしれない。確認作業をしても求めた答えが返ってこない苛立ちと自分には与えられなかった・与えられるはずだった愛を得ているオリバーの存在。守ってもらえるオリバーはビルにとっても眩しかったんじゃないかと思って。

フェイギンは仲間も家族もいない、と嘆くけれどそれは周りにいる人を泥棒ばかりとライオンキングのスカーがハイエナたちを見下していたように自分が仲間と思えていないから。周りにいる人を信じられればもう仲間はいたし、家族でもあったんだと思う。

規制退場を知らせるドジャーのアナウンス、(公演を観たから)これでみんな仲間!みんな家族だよ!というような内容を聞いて見かけた広告を思い出しました。

 

責任

舞台で見ている観客はブラウンロウの行動を取りたくなるように出来てると思います。ただ物語を見ているとオリバーに幸せが訪れても、その他の多くの人々は幸せにならなかったと知ります。その後味の悪さは世界を見直し変える力を持っているはずです。それこそが自由、そして責任なのではないでしょうか?後味の悪さこそがオリバーの醍醐味なのではないかと考えます。

ジョージ・オーウェル「一杯のおいしい紅茶」にある"よい悪書"は野心的な文学ではないのに本格的な作品が滅びた後でもなお読むにたえる類いの本、気晴らしを必要とするような文明がつづくかぎり、「軽」文学にも指定席がある。将来も残るだろうというのはポピュラリティかなと思って。
オリバー・ツイストは作品の中で救貧院、救貧法、シティのスラム街の生活についてを訴えてる側面があると思います。そういう作品はその当時は伝わっても後々には調べて知る作業が加わるから伝わりづらくなるんじゃないか。そこを補うのが映画、ミュージカルなどの表現方法なんじゃないか?とか。最近ポピュラリティを考えたのはキース・ヘリングで伝わりやすさと親しみやすさが共存していて自然に意図ある作品と共にある。新美の巨人たち キース・ヘリング「踊る二人のフィギュア」 - 珈琲とmilkのパーセンテージ (hatenablog.com)

オリバーだと検索しててウンパッパってそういう曲だったんだ?!という感想よく見かけます。曲だけでも有名だから後から場面に興味を持つきっかけになるんだなと思って。

 

 

「Oliver!」題字の色って何の意味があるの??

幕のOliver!の文字は空の色かな?と思ったけど定かじゃない話。

オリバーの色、最初夕焼けかと思ったけど朝焼けですね!1986映画のラストの空こんな色じゃなかったでしたっけ?舞台の朝焼けはマジックアワー、La La Landで背景にしていたピンクと水色のグラデーションのような空だから色違ったな~と思いながら見てました。

マジックアワーとは? 風景写真やポートレートが綺麗に撮れる魔法の時間帯 | フォトグラファン

登場人物と空

オリバーが迎えるのは青空の朝。
フェイギンが向かうのは朝焼けの空。
ビル・サイクスが来るのは寝静まる真夜中。

朝は始まり、夜は明けない。(サワベリー一家のところでは夜も朝もあります)

もしこの朝や夜に意味があるのなら朝は生きていくこと、夜は明日がないことなのかもしれないなとは考えました。

ワンデイモアの「明日が来れば」とメモリーの「明日が」。メモリーは明日が来る、来るけれども思い出そして夜に生きていたグリザベラにとって複雑な「明日が」。ワンデイモアはそもそも明日が来るのか分からないから「明日が来れば」こういうとこレミゼなのかなと思う。
これはレミゼの感想なのだけどオリバーも朝が来る=明日が来るのだなと感じました。

Oliverに入っているルビーちゃん

海外版はOliverの文字でフェイギン作ってたからフェイギンの目じゃない?と思ったけど海外のオリバー!宝石の色がエメラルドのような緑のものもあります。意図的にルビーなのでは?と思ってもいいかなって。

ルビーというと昔TVで見たピジョンブラッドというルビーを思い出します。ルビーに込められた意味とは | ジュエリーstory (kyocera-jewelry.com)

もしOliver!のルビーがフェイギンだけでなくナンシーの目も含めてのものだとしたら撃たれた血で思い出すのも分かるかな~なんて。思いついたにすぎないから信じないで欲しさあります。
ジェリクルキャッツのJellicleはエリオットによる造語。確かだと示せないけどJewelry(宝石類)とmiracle(奇跡)を合わせた言葉だと頭にあるからOliver!題字を見ても思い出します。オリバーはジェリクルと思うと周りの人々も皆ジェリクルなのでは?映画「キャッツ」安倍寧×堀内元 対談 (3/3) - ステージナタリー 特集・インタビュー 記事の小噺のジェリクルの意味合いも持っているんだろうなと思うわけです。ばりばりの深読み。

 

終演後に残る気持ち

ナンシーが死んでドジャーが捕まってビルが落ちた後にオリバー良かったね!と思える人いるの?いや全然いてもいいんですけど私はなかなか思えない。

追い詰められて後退り
ジリジリ迫られて舳先まで
いよいよ年貢の納め時
やむなくついに 自ら身を投げた

その知らせが届くと大歓声
岸辺でお祝い大パーティー

キャッツ「海賊猫の最期」より

最期というのが毎度悲しくなるんだけど海賊猫グロールタイガーは自ら身を投げてるだけにいやいや最期とは言いましてもライヘンバッハの滝かもしれない(モリアーティ教授とシャーロック・ホームズは滝に落ちたけどホームズはなんでか助かっちゃう)と考えてます。どう考えても海賊猫グロールタイガーはモリアーティ側だろうというのはご都合主義で許されたいつまりはビルが落ちた後の展開に気持ちがついていきません。ビル・サイクスは自分から望んだ行動ではないし本当に最期なんですよね。気持ちの整理せずに進んでいくからナンシー…ビル…と思ったまんまただただ光景を見つめるだけです。カテコの明るさが大変な救いです。

 

救貧院は貧しいものを救う場所ではない

「救貧院」という用語の最も初期の既知の使用法は、オックスフォードシャー郡の市長またはアビンドンが「貧しい人々を働かせるために私たちの自治区に救貧院を建てた」と報告した1631年にさかのぼります。
18世紀の終わりまでに、2万人近くの男性、女性、子供がロンドンの大都市にある80の救貧院に収容されました。他のすべての都市には、それぞれ最大600人の「囚人」を保護する数十の救貧院がありました。19世紀初頭までに、救貧院はイギリスの貧しい人々への最も一般的な救済の形になりました。多くの点で、救貧院はビクトリア朝時代の代名詞になりました。

ビクトリア朝の救貧院は、恵まれない人々に仕事と避難所を提供することを目的としていましたが、新しい救貧法は、彼らを社会で最も脆弱な人々を拘留する刑務所に変えました。

救貧院:イギリスのビクトリア朝時代に貧しい人々が事実上投獄された方法 (ichi.pro)

主人公のオリヴァは、孤児として救貧院という施設に入れられます。救貧院とは、当時のみなし児を収容する、教会に属する施設ですが、保護とは名ばかりで、子どもながらに一日じゅう労働を強制されるのです。 
これは当時の、貧しき者も恵まれない立場にある者も、人に頼らず自らの力で働いて生きるべきであるという、1830年代の考え方と、それを反映した救貧法という法律の改革が背景にあり、貧民の自立を促し、甘えは許さないという大義のもとで、子どもたちは、実際には与えられている保護以上の労働を強いられていたのです。

オリヴァの入った救貧院の運営を任されている大人たちは、毎日豪勢な食事をしていますが、子どもたちはおかゆ一杯だけしか与えられず、いつもひもじい思いをしています。子どもたちの間でくじ引きをして、外れを引いたオリヴァは、子どもを代表して、食事の最中に「おかゆをもっとください」と頼みますが 、役人の怒りを買ってしまい、救貧院を追い出され、葬儀屋に労働に出されることになります。

教養番組「知の回廊」63「19世紀の英文学と少年法」 | 中央大学

救貧院で食べたいものを言うけれど子供たちは見たことはあっても食べたことないで合ってる??救貧院の食事・お粥をもらった子供たちは嫌そうな顔をするけれどそれしか知らなかったらまずいも何もないんじゃないかと少し思います。美味しそうだからご馳走に惹かれていて食べてはみたいけど実際味を知らない、ただ羨ましいだけ。要求も「もっとください」であって他の食べ物をくださいではない。オリバーがシャーロットから出された犬にあげる用の肉を食べるのは食べなさいと言われたから。バンブルが言っていた"肉を食べさせたからいうことを聞かなくなったんだ"は当時それなりに納得出来る理由だったんだろうなぁ。後で思ったけどチャーリーはカビが生えてるとは言うけれどソーセージを食べてる。グリムウィグが言うオートミール(痩せている子)とビーフ(肥っている子)にはバンブルが言っていた肉を食べるが含まれているのか分からないけれどブラウンロウとの会話考えるとオリバーはどっちかね?に対して不承不承オートミールだと答えてる気もする。

原作本、バンブル夫妻はオリバーのお母さんアグネスの形見である金のロケットを売ってしまったことを隠したため、ブラウンローに「今後われわれのほうで、あなたたちが二度と重要な職につけないように手配するだけです。下がってよろしい」と言われます。人のものを盗んで売るのは確かにしてはいけないこと。

「法律がそんなことを推定するのなら」「法律はまぬけだ――馬鹿者だ。そういう眼でものを見る法律というのは、独身者だ。せめて経験によってその眼が開かれることを望みますな――経験によって」

公職を追われて救貧院に入ると綴られている夫妻は罪の分裁かれたとしてもかわいそう。ところで原作本読むまでずっと経験でなく敬虔かと思ってました。

 

ライオネル・バートによるオリバー!の音楽

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ガーシュウィンの楽しさ

ライオネル・バートによるオリバー!の音楽でガーシュウィン思い出すのは劇場の記憶(オーブでパリアメやってたから)かな?と思ってたけど動物の鳴き声や蹄の音、そういう楽しさがあるからかもしれない。

1994オリバー音源聞いてるんだけど「Reviewing The Situation(最初から考え直そう)」の歌ってる楽器はクラリネットかな??舞台は弦楽器(バイオリン?)だよね?なんで違うのか気になるのとどっちのソロもそれぞれ素敵すぎる✨あと曲改めて聞くと演歌みたいだなって親しみを感じる~!クラリネットだと思われる楽器がラプソディー・イン・ブルー冒頭よりは短いくらいのグリッサンド(音を滑らせるようになだらかに変化させていくやつ)してる気がするけど弦楽器もしてるのかな??注目したい。

Gershwin Rhapsody in Blue (excerpt) | Leonard Bernstein - New York Philharmonic - YouTube

「Consider Yourself」

歌の上を鳥のさえずりのように自由に奏でてるピッコロや、主旋律と支えの間で動いている楽器は気持ちのいいものなんだろうか?大変なこともあるのかもしれないけどこういうのいつも楽しそうだなって思う。人が入り交じると弦楽器に管楽器が加わってくるような感じに聞こえる。途中にある三拍子のとこ好き!

マーチは2拍子、ワルツは3拍子?拍子の種類 | CLAP

Andrew Lloyd Webber

“Lionel was the father of the modern British musical,” composer Andrew Lloyd Webber said. “Lionel’s genius has, in my view, never been fully recognized by the British establishment.”
Lionel Bart; British Lyricist, Composer Created 'Oliver!' - Los Angeles Times

The stage musical not only influenced a new generation of musical writers, like Andrew Lloyd Webber, but prefigured a decade of British-influenced film musicals ("Goodbye, Mr. Chips," "Scrooge," etc.)and presaged the surge of British-written or produced mega-musicals that began with Jesus Christ Superstar and continued through Evita, Cats, The Phantom of the Opera, Les Miserables, Miss Saigon and more.

Oliver! Composer-Lyricist-Librettist Lionel Bart, 68, is Dead | Playbill

オリバー!見てるとロイドウェバー影響受けたのでは?と感じるから気になって。
恐れずに言葉にすると「彼が必要とする限り」を聞くと「メモリー」を感じるから。

 

1シリング

しかし、その一方で、フェイギンからスリを仕込まれた初日にオリヴァーが貰う1シリングは、ディケンズの児童労働にも幸福な瞬間があったことを示唆する。フォスター (John Forster)は次のように書いている。「ディケンズは土曜の夜はご褒美の時間だったといっていました。ポケットに6シリングを入れ、店のショーウィンドウを眺め、これで何が買えるだろうと考えながら帰宅する時は本当に嬉しかったとのことです」(Forster I, 23)。オリヴァーがスリの見習いという児童労働の対価として得た1シリングは、 ディケンズが靴墨工場場でもらっていた日当分と符合する。 むろん、この貨幣にまつわる記憶は、瞬時に「苦菜」(「出エジプト記」12章) を口に含んだ時のように、作者に苦難の記憶意をも呼び起こしたはずである。
総合 93.中村隆「ディケンズ・メイヒュー・児童労働」

http://www.dickens.jp/archive/archive.html#0.2_others

この論文、全然違うことをお聞きして教えていただいたものなんですが違う部分にグッときてしまいました。論文内、オリバー・ツイストには明確なお金の単位が出てこず宝石などのそのものが高価になっていると書かれてます。その中で出てくる1シリング。ディケンズの体験による1シリングなのか分かりませんが大変な労働を当時の小さな大人・子供がして代価の6シリングで何をするか楽しみにしていたささやかさ。私は子供は守られるべきという現代の価値観で見てしまうけどもっと優しさに包まれて欲しい。

 

登場人物ごとの書き残し

フェイギン

第4の壁

フェイギンがオペラグラスを用いて第4の壁を越えてくるのは毛抜の最後の挨拶みたいだなぁと思う!床の扉が開いて目に見えている空間の先に見えない空間があるのも、第4の壁越えるのも定まっていた世界が広がる感覚がめちゃくちゃ好き。額縁の中にある世界はその中で約束された世界観で観客もそういうものなんだなと観る。床の扉はその奥の見ていない空間を感じるだろうという観客への委ねがあると思うし、観客への話しかけは世界観無視で話しても空気を共有してくれるという信頼に感じるから勝手に嬉しいなと思ってる。

フェイギンの箱

フェイギンの箱は何かを表しているんだろうか??とても気になる…葬儀屋の棺とフェイギンの箱は人が入るのが一緒。それによって棺を頼む人=亡くなった後に集う人がいるのだと感じました。これがもしフェイギンがこの後に亡くなるのだとしたら…フェイギンの箱ってもしかして原作の結末、捕まってニューゲート監獄に入る未来への示唆??とか考えてたらミス・サイゴンにも宝箱の方は出てくるらしい(笑)

ミュージカル『オリバー!』|『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』等の“原点”を思わせるキャラクターたち (oliver-jp.com)

「Be Back Soon」

子供たちはフェイギンが自分たちを心配してくれていると思っていて、フェイギンからは自己保身・誰も捕まるなよ(=情報を洩らすな)の意味も感じられる。よく見ていけば自分のことしか考えていないフェイギンをビルもよく分かってて後の場面で「終わったな」と言っているんだと思うし、曲調が楽しく親しみやすいから複雑。

 

ナンシー

原作本と舞台を見比べて

オリヴァー・ツイスト - 珈琲とmilkのパーセンテージ (hatenablog.com)

ナンシーと対面するのはブラウンロウよりローズの方がよりナンシーの生まれと生活の違いに気づけます。また読者はローズの気持ちが分かるから善意を否定するナンシーが背負うものが分かりやすい。舞台はナンバーがリプライズまであるから恋愛の要素も強く感じられる(原作にも恋愛はある)けれど原作は共に過ごしている人々の生活、ビルへの恋愛を越えた慈しみの愛が丁寧に綴られていてぐっとくる!

“彼”に含まれるもの

ナンシーは彼(ビル)、彼の帰る場所、彼を取り巻く環境・生活(フェイギン率いるスリ集団)をも守ろうとしてるのだと思って。この守りたいもの全てに対して「裏切らない」ビルはフェイギンが取り仕切るスリ集団の一人。犯罪・スリをしている人は誰かが情報を漏らせばそこから皆捕まってしまう。だから口を割ることはない。情報=死であるから。

ナンシーソロ「彼に必要とされる限り」はグリザベラの過去の一例かもしれない

CATSのグリザベラはなんで嫌われているんだろう?小泥棒、悪女、犯罪王と悪いことをしていても個性(ジェリクル)なのに年老いたグラマー猫がなぜ嫌われるのか?力が及びそうな猫ではないのに近づこうとする子猫を止める必要があるのか?

ビルがナンシーのことを裏切った(=自分・皆を売った)と思ったように、群れの皆に裏切ったと思われていて子猫も近づかせないのではないか。それだと警戒は分かるかなと思いました。ナンシーのように自分もスリ集団の一人だからという理由はグリザベラにはないかもしれないけれど。私の中で永遠の横浜キャッツのメモリー貼っちゃう。

メモリー :: 劇団四季 :: 横浜キャッツ公開舞台稽古より - YouTube

 

ビル・サイクス

ビルが甘えられるナンシー

恐れられていると自認しているビルが見つめて名前を問う相手は他の誰でもないナンシー。ナンシーは必要とされた答え「ビル・サイクス」と恐れることなく口にする。問うて変わらず答えてくれる相手だとナンシーを理解っていて聞く。些細なことだけれどビルの最大限の甘えなんだろうなと思っています。

群像劇の主人公

群像劇と聞いて思い出すものの中にミュージカルタイタニックがあります。About - ミュージカル『タイタニック』 (umegei.com)タイタニックは各々がどんな思いをもって乗船したか描かれ、そして当然のごとく沈むわけです。だからポスターはなんで設計士のアンドリュースなのかなぁ?と思うくらいには主役という主役がいません。

母の愛・無条件の愛を求め続けている大人の主人公はよくいる!だからビルは主人公になり得る人物だよねと私は注目してるからこそ尚更そう思います。ただこれはビルだけじゃない。オリバー!の登場人物は皆それぞれそう思えるはず。掘り下げたくなる魅力に溢れてる。だからこそその時々、気持ちを反映させる群像劇は写し鏡のようで好きです。

本を投げ捨てる

エポニーヌが「そんなことより」と本を投げてしまうの、私めちゃくちゃショックでマリウスは穏やかに接するからエポニーヌには伝わらないだろうけど大きな隔たりを感じる場面だと思っています。この動作だけでこの二人が共にあることはないんだろうなと察せる気がする。
何を言いたいかといえばビルも本を投げるよねってこと。当然生きていくためにはお金が必要なのだけど本で表されているだろう知識や心の豊かさなんかは投げ捨ててしまうのだと思って。

 1968映画のビルがフェイギンに「金を寄越せ」と迫る場面は舞台だと本じゃないだろ?寄越せの場面に含まれるんだろうか?私はだけど本があるから印象変わる気がする。

フェイギンは哲学書持ってるんだよね、少なくとも読めるし価値を知ってる。フェイギンって何者なんだろうなと改めて思うところです。

spiさんのビル、プレビューから本公演になって台詞増えてたけどあれ観た方がどういう解釈されてるのかとても気になる…。

映画ビルは人を殺めてしまったことに衝撃を受けていてマクベス的な感じにも見えたんだけど、舞台の「その目…!」という台詞で目と集約して表されるのは何故なんだろうと思って。
ナンシーの「何でそんな目で見るのさ」という台詞の場合、恐怖を感じるようなビルの責める目、じっと見つめる目に見つめられて言葉にする気がします。

でも多分spiさんのビルが言葉にする「その目」はナンシーがじっと責めるように見つめる目とは違うんじゃないかと思います。それはナンシーがビルに対して最期まで責めたり、攻撃したりする人ではないと思うから。これ最初はナンシーの目に曇りがなく純粋だからかなと思いました。自身が悪いことをしている自覚があるビルは自ら影に身を置いています。光あるところに影がある、また影があるから光に気づく。愛し信じぬくナンシーの目によって自身の影が色濃く感じられたのかもしれないなと。
それはビルが威嚇し力を誇示する・周囲の人々が自分より劣っていると認めさせることによって自分の存在を肯定出来る人なんだろうと私が思っているのも含みます。

次にナンシーの目に恐怖があったからかなと思いました。「俺の名前」でただ一人ビルが名前を呼ぶことを求めたナンシーは恐れることなくビル・サイクスの名を呼ぶ。オリバーのために戦ってでも守ろうとした時もナンシーはビルを恐れず立ち向かっていました。「彼に必要とされる限り(・リプライズ)」で繰り返しナンシーは裏切らないと思いを重ねます。「裏切ったな…!」そう言われたナンシーはビルを裏切らないと心に決めていただけにその一言がショックだったんじゃないかなと。ビルに裏切ったと思われた恐怖と訪れる死。もし目に恐怖が見えたならきっかけはビルの「裏切ったな…!」だと思うけどビルも自分を恐れない人であるナンシーがいなくなった悲しみは大きいのだろうなぁとも思いました。

原作本ビルはナンシーを銃殺した後も死体の眼がこちらを向くのではないかと思いこん棒で叩きつける。逃げている最中、ずっとナンシーの亡霊と眼から逃げ続けて逃げ場のないロンドンへ戻っていく。最期は本来刑が執行されたなら下されるであろう首吊りで亡くなります。亡くなるきっかけは眼が見えたから。罪を自覚させる眼なのだよねきっと。神の目。

舞台ではナンシーはこん棒での撲殺、ビルは銃殺です。眼を見たビルは銃弾によって動きを止められ2階から落ちていきます(これどちらかといえばブルズアイの最期ですね)ビルは誰かに殺されたけどビルを追いかける罪の意識によって何もしなくても亡くなっていっただろうと思う。
原作本フェイギンの裁判中、好奇の目にさらされる場面があとにあってビルサイクスが苛まれた眼と被る。人の目を避けてスリをして生きてきたことや実際に自ら人を殺した男や幾人も監獄に送り込み絞首刑にしてきた手を下さない殺人をしていた男だとしても人が亡くなるだろうことを楽しみにして笑う。死刑が娯楽なのは健全ではないなと感じます。

守るもの

ナンシーを殺してしまってフェイギンに会いに行くところ。何故会いに行ったのか?が強く見えてビルの孤独さが増すのかな。ビルは多分フェイギンに逃げろと言われると分かっていたのだろうなと思える。考えてみるとしんどい。と思ったけれどそれだけではなくて幼い頃から刷り込まれたルールなのかもしれない。原作本ビルは一人一匹で逃げますけど舞台ビルはフェイギンとギャング団に危険を知らせる=守ろうとしたともとれるかも?

「人はみな自分の友だちだ」フェイギンは答えた。「ある魔術師は、三が魔法の数字だと言う。別の魔術師は七だと言う。だが、ちがうのだよ、わが友人。どちらでもないのだ。魔法の数字は一だ」
「は、は!」ボルター氏は大声で笑った。「一よ、万歳!」
「わしらのような小さな集団ではな」ユダヤ人はいまの見解をもう少し説明する必要があると感じて言った。「みんなが一番なのだ。わしやほかの若い連中を抜きにして自分だけ一番と考えるわけにはいかない」
「そんな馬鹿な!」ボルター氏は叫んだ。
「つまりだ」ユダヤ人は相手の口出しに気づかなかったふりをして続けた。「われわれは一心同体で、ひとつの利益を追っている。そうでなくてはならん。たとえば、おまえさんの目的は一番ーーつまり、おまえさん自身ーーの面倒を見ることだろう」
「たしかに」ボルター氏は答えた。「そんなとこだな」
「だが、わしの面倒を見ずに、一番の自分の面倒だけ見ることはできない。わしも一番だからだ」
「二番、てことだろ?」利己主義の資質に大いに恵まれたボルター氏は言った。
「ちがう!」ユダヤ人は言い返した。「おまえさんにとって、わしはおまえさん自身と同じくらい大切なのだ」

「わしの言いたいことを、はっきりわかってもらうためさ」ユダヤ人は両眉を上げて言った。「絞首台から逃れるために、おまえはわしに頼る。わしの小さな商売を繁盛させるために、わしはおまえに頼る。最初のがおまえの一番で、次がわしの一番だ。おまえにとって自分の一番が大切になればなるほど、わしの一番に注意しなきゃならん。そこでわれわれはようやく、わしが最初に言ったことに戻るわけだーー一番を大切にする気持ちがわしらをひとつにする。みんなで粉々に吹っ飛びたくないなら、そうでなくてはいけない」

p.559~561 チャールズ・ディケンズ、加賀山卓朗/訳 『オリヴァー・ツイスト』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

見ていた歌舞伎の中に「虎の威を借る狐」が例えで出てきまして。Sparkle、spiさんのオリバー!の話、最初パッと読んだ限りではビルが守るもの分からなかったんだけどビル・サイクスがいるからこそ守られているものは確実にあるなと思いました。

My name

舞台ビル・サイクスにモンクス入ってる?と思ったのは怪しさや理解されない苦しみがMy nameに入っている気がしたから。でも今思うと名が通りすぎているビルと本当の名前を知られていないモンクス、大きさや頭のよさ、悪事の方向性の違いを感じられるのかも。

spiさんのビルだからなのか名前だけで恐れられてしまう悲しさを感じます。My nameのビル・サイクス像は周囲の作り上げたものなのではないか?ビルがしていることは例えしたいと思っても様々な理由でしない選択をしている。行動を妨げる感情や思考を傷ついた心が止め、自暴自棄になっているように見えました。そこにナンシーが同情するのかなぁとも。

 

チョチョイとつまんで

・ステージの床に扉があって開く、という演出を見るとウィキッド…!と思うんだけど単に私がウィキッドで初めて見たにすぎないなと思います。

・煉瓦の壁にOliver!の文字が浮かび上がった幕、ワクワクした経験があるからだけどピンクの傘で叩きたくなります(笑)だから銀行といわれて思い浮かぶのもグリンゴッツだったりする💰️

ディケンズに最初に触れたの多分「エドウィン・ドルードの謎」だからパンフレット読み返してみたけどあれは投票によってその日の結末が変わる観客参加型なのが肝だから結末以外をそんなに覚えてない💦ただロンドン橋の場面見てるとなんかこういう感覚あったな~と思い出していました。

・出せるだけイギリス要素を出すような海賊船の出し方。

大道芸人はやっぱり雨に唄えばみたいだよね

黒執事を通ってたらもう少し葬儀屋に思いはせられただろうか??

・なかなかにフェイギンが挙動不審なのはなんなんだろうなぁ。信じているようで信じられないのかな?人見知りなのかも。

プレスコール動画、ずっと聞いてて思うのは武田真治さんのお声が聞き取りやすくて素敵だなぁということ!吹替で聞けたら嬉しい方だなぁ…既にやってらっしゃるのでは??と浅野さんぶりに調べました(笑)

・ロンドン橋の背景、ターナーみたいだなと思います。それという絵が浮かぶわけではないけれど。

t.co

・「あなたの葬儀」思い出す度にのだめのプジョーポーズみたいなのを夫婦でしてるのかわいいよなぁって思うよね。

流刑地、ノアが言ってるオーストラリアのことです。

流刑地/流刑植民地

・ドジャーはサボみたいだなぁとミュージカルアンデルセン以来に思いました🎩

・シルクハットってなんだろう?

・こん棒を持っているのってなんでなんだろう?自分の手ではなにもしてないのだろうか?

spice.eplus.jp

spice.eplus.jp

SPICEさんの記事とても好きで繰り返し読んでいます!ありがとうございます!

 

自分が反映される群像劇

オリバー!見てると私はイギリスのミュージカルが好きなのだなぁと感じるし、群像劇が好きなのは知ってたけど改めて好きだと感じます(笑)注目する人物も、考えることも、気づけることもその時その時によって違う。舞台のことを総合芸術とも言いますが様々な分野が関わりあってどこを見てもオリバー!を知れる。個人的には多分今年のmyベスト1作品だろうなぁと感じています。あまりに好みすぎました(笑)