珈琲とmilkのパーセンテージ

苦かったり甘かったりするので無機質の筆や箱で切り取ってみる。

太平洋序曲-2023/03/21-

2023/03/21(火)ソワレ

日生劇場

GC

 

作詞・作曲 スティーヴン・ソンドハイム
脚本 ジョン・ワイドマン
演出 マシュー・ホワイト

 

翻訳・訳詞 市川洋二郎

音楽監督 キャサリン・ジェイズ

美術 ポール・ファーンズワース

照明 吉枝康幸

音響 山本浩一

衣裳 前田文子

ヘアメイク 中原雅子

音楽監督補 小澤時史

指揮 小林恵子

歌唱指導 やまぐちあきこ

演出助手 河合範子

舞台監督 藤崎遊

 

出演
狂言回し 松下優也
香山弥左衛門 廣瀬友祐
ジョン万次郎 ウエンツ瑛士
将軍/女将 朝海ひかる

老中 可知寛子
たまて 綿引さやか
漁師 染谷洸太
泥棒 村井成仁
少年 谷口あかり
提督 杉浦奎介
提督 武藤寛
提督 田村雄一
提督 中西勝之
提督 照井裕隆
水兵 藤田宏樹
少女 井上花菜

 

あらすじ

時は江戸時代末期。海に浮かぶ島国ニッポン。

黒船に乗ったペリーがアメリカから来航。

鎖国政策を敷く幕府は慌て、浦賀奉行所の下級武士、香山弥左衛門と、鎖国破りの罪で捕らえられたジョン万次郎を派遣し、上陸を阻止すべく交渉を始める。

一度は危機を切り抜けるものの、続いて諸外国の提督が列を成して開国を迫りくる。

目まぐるしく動く時代。

狂言回しが見つめる中、日本は開国へと否応なく舵を切るのだった。


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ミュージカル『太平洋序曲』公式サイト | 梅田芸術劇場 (umegei.com)

 

『太平洋序曲』観てきました🚢

私これ好きだなぁ。全体を俯瞰して物事を見ていくというのが好きです。インパクトあるけど穏やか。

日本をどう思うか

叙事的演劇

太平洋序曲、観客が出来事の観察者になるべきだから(実際そうでなくても判断されそうな人含めて)もし日本人が作ったとしたら物語の通りメッセージだと思ってしまう人がいそうで危ういといいますか破綻してしまう作品なんじゃないかと想像します。 というのを流れてくる感想と先日観たジョン万次郎の夢から考えていました。

被害者であり、加害者である

『太平洋序曲』ラスト、明治天皇が出てきて今までの全てを捨て去り西洋化・近代化して開国を迫った諸外国のように大東亜共生圏・領土を増やそうとたたみかける。そのまま現代に続くわけですけどそれを例えば"日本は平和を諸外国の砲弾によって終わらせられた被害者だ!"とか、"仕組みをそっくり西洋に合わせたのだから領土拡大していくやり方も真似せざるを得なかった"とか考えるのは私は違うと思っています。自分達の国が何をしたかに向き合わず肯定は出来ない。日生劇場がある場所を考えてもそうだそうだと戦いを望む人が実際にいて、もしこの明治天皇のフィクションが事実と異なっていると伝わらなかったら被害者日本の側面に同意しやすい作品だと思います。だから"日本のことをどう思うか?"の問いかけはあくまでアメリカや開国を迫った諸外国に対してだと受けとりたい。作品制作された当時なのか今もなのか分かりませんが日本は加害者イメージ前提で作られているんだろうね。

NEXT

問いかけはあれどNext・これからは観客にゆだねられる。

Nextは上演当時を思うと立ち直る日本を見ての気持ちがあるのかもしれない。けど今この作品を見ると日々めまぐるしく変わりゆく世界情勢の中、日本は何をしていようとしているのか?過去と同じ過ちを繰り返そうとしていないか?自戒する作品でもあると思う。

ジョン万次郎の夢

『ジョン万次郎の夢』を思い出すと「世界に目を向けて 大きく心を開こう」日本としての反省と社会の仕組みを理解して進もうと解決策を提示しているようだなと思える。3月にジョン万次郎作品を見比べられるからどちらにせよ出来事を俯瞰して平和を考えるきっかけを与えてくれる作品だなと思います。今の日本で上演されているってことを考えちゃうよね。

コメディ

途中の船が踊っている描写とか批判的に描こうとするとああなるけど国々の関係性を扱った作品というところでヘタリアに似てるなと思った。だからどうってことはないけれど描き方がえらく違うもんだなと思って。コメディにも色々あるんだなって感じ。

舞台セット

現代の美術品展示室から始まり過去へ遡っていくのはアイーダみたい。

木を主体としたセット

開演前に全体が木目調なんだなパッと思ったんですがよく見ると木目ではなく波や枝などが含まれてる。公式卓球台を思い出します。 舞台芸術セミナーで全体モチーフは波と聞くまで下手C型の木は月だと思ってたんですがそう聞けば神奈川沖浪裏に見えてくる🌊 階段も富士かと思ってたけどそうではないのかな?

映像も含めて水、土、羽根の中で舞うのは見たことあってどれも美しくて好きなんですが木の中で舞うようなオープニングの舞、発想になかったけど素敵だった~~🙌 "腰が入る"なのかな?足元は少し軽やかめ。

仏壇

個人的に印象的だったのは香山夫妻宅の仏壇。私には日常のものだからああ仏壇だなとも思わないけどあれBWではどうしてたのだろう?むしろなかったなら分かる。 いちいち説明なくても分かることが日本人には多いのだろうなぁと思いました。今回がそういう演出なのかな?

拒否感やタブーを感じる演出を見て

将軍が自分が乗ってきた籠の上に腰かける。将軍が座ることで威厳を出すということらしいけれど何が悪いのかと言われるとよく分からない。単純に頭のある場所に座るのが気持ち悪いのかもしれません。

文楽人形で表すのは本当に大丈夫なのか?ととても引っかかります。詳しくないですけど形式上の存在で実質権力がなかったというのがこんなに理解されないんだなというのを目の当たりにする経験だなと思います。宗教ではないけど神話といいますか和暦からしても生活に密接した存在であって島国を束ねるのに利用されているグロテスクさと向き合う不思議さ。言いたいことは分かるんだけど舞台に人形=象徴として出てくるのも燃える人が少なからずいるだろうと思うとわざわざ喧嘩を売るような面倒くささを感じます。直感的にタブーでは?と感じるのは自分が意識していない集団性に触れている気がします。東京公演終わって燃えてないから怒るような人は観劇しないのかもしれないね。

俳句の歌

私はるひまで初めて歌を歌ってるの聞いた気がするけどもう既にあるもんだなと思った「俳句の歌」でした。歌っている内容は恋の歌で素晴らしいものというより気持ちそのままって感じ。

そういえばホトトギスの歌も織田信長豊臣秀吉徳川家康のやり方の例えだとパッと分かるのは知ってる人だけだからBWでどうしてたのかとても不思議。訳が絶妙なのかな?

ミュージカル『太平洋序曲』感想喋り倒しますを見て

ミュージカル『太平洋序曲』感想喋り倒します - YouTube

ほんと良い作品というより秀逸な作品だと思う。だからこそあの場所でこの物語は強気だなみたいな意味でなんか怖くなっちゃう。 情報に対するネイティブさ、説明いらずで見ていける"日本"のお話だって不思議。

個人的には言うほどコメディには感じなかったけど日本はそういうものだと見ているだけで本当のところは理解されていない感覚は観なければ気づけなかっただろうから気づけたの良かった。

お米を食べますについての場面、食に対する喜びが大きいんだなと何となく思ったけど明確にそんな描写なかった気がする。新嘗祭とかそういうのを思い出すような感じだった気がする。

ずっと冒頭が気になってます。ボストン美術館展とか見てても思ったけどどうしてこの浮世絵や刀がボストンにあるんだろうなぁみたいな。現代の美術コレクターが狂言回しって今はなき日本を所有・価値を見いだしてるという意味なの?飾られてる人形も、着物も、展示品でもあるけれど文楽や歌舞伎などの舞台や街中で今も生きている文化。だからアメリカンポップアート展で飾られていたアンディ・ウォーホルの絵が場所にそぐわないと感じたようにもっと日常の中に溶け込んだものじゃないかと思う。(モノを日本に返還した方がいいとかいうロゼッタ・ストーンの意味ではありません)魅力的な日本のズレと日本側が文化を理解していない様子、全て捨てて近代化しようとする様がクールジャパン浮かびます。