2022/03/21(月)マチネ
東京建物 Brillia HALL
あらすじ
この世界に たった二人だけの兄弟 どんな時も 二人で生きてきた
弟の進学費用のために空き巣に入り、強盗殺人を犯してしまった兄・武島剛志。高校生の弟・直貴は唯一の肉親である兄が刑務所に 15年間服役することになり、突然孤独になってしまう。兄が殺人を犯した事実はすぐに広まり、加害者家族となった直貴に向けられる周囲の目は一変した。高校卒業を控えたある日、直貴の元に服役中の兄から 1通の手紙が届いた。それから月に一度、欠かさず手紙が届くようになる。兄からの手紙には獄中での穏やかな生活が書かれている一方、直貴は「強盗殺人犯の弟」という肩書により、バンド・恋愛・就職と次々に夢を奪われ苦しみ続けていた。年月が経ち家族を持った直貴は、ある出来事をきっかけに、ついに大きな決断をするのだった。
キャスト・スタッフ
出演武島直貴(弟) 村井良大
武島剛志(兄) spi
由美子 三浦透子
ユースケ 中村嶺亜(7 MEN 侍 / ジャニーズJr.)
コータ 佐々木大光(7 MEN 侍 / ジャニーズJr.)
アツシ 今野大輝(7 MEN 侍 / ジャニーズJr.)
朝美 青野紗穂
孝文、忠夫 染谷洸太
検事 遠藤瑠美子
緒方敏江 五十嵐可絵
平野 川口竜也
幼少の直貴(声のみ) 奥田奏太
幼少の剛志(声のみ) 渡邉隼人
ミュージシャン
村井一帆(pf)
えがわとぶを(Bass)
萱谷亮一(Perc)
中村康彦(Gtr)
古池孝浩(Gtr)
土屋玲子(Vln)
日俣綾子(Vln)
三葛牧子(Vln)
スタッフ
原作:東野圭吾「手紙」(文春文庫刊)
脚本・作詞:高橋知伽江
作曲・音楽監督・作詞:深沢桂子
演出:藤田俊太郎
二度目だから繋がりが断たれていく場面ではなく直貴を心配してくれる由美子やユースケ、その存在を教えてくれる平野と社会的な死から生還していく直貴に泣いてしまう😢
— 明音 (@akane_akaruioto) 2022年3月21日
剛志に殺人者の弟とその家族として暮らしていると手紙で伝え縁を切った後、ユースケの手助けで再び兄弟を音楽で繋ぐのグッとくる。 pic.twitter.com/71OHoQQl1d
舞台はいつもそうですが「手紙」は特に自分が暴かれるような作品だと感じます。少し恥ずかしさと緊張がある。
なんのために生まれて なにをして生きるのか
二度目だから繋がりが断たれていく場面ではなく直貴を心配してくれる由美子やユースケ、その存在を教えてくれる平野と社会的な死から生還していく直貴に泣いてしまう😢
剛志に殺人者の弟とその家族として暮らしていると手紙で伝え縁を切った後、ユースケの手助けで再び兄弟を音楽で繋ぐのグッとくる。
直貴と剛志の関係性は直貴と由美子、ユースケとは違うかもしれない。
「たった二人だけの兄弟」
「紙切れひとつで切れる関係性じゃないんです」
それはその通りだから。
「塀の中は寂しいんやって」
と由美子は言うけれど剛志にとってはきっと塀の外も変わらない。直貴に由美子がいた有り難さを平野から指摘されて噛みしめた。直貴が例え関係性を断とうとも由美子の手紙、ユースケの音楽で剛志への繋がりがある。続いていく、生きていく。母も過労で俺が殺した、直貴にも迷惑をかけた、俺はいない方が良かった。二度目だから思うのだけど事件を起こす前に高校へ行けるよう剛志がささえていなかったら直貴が大学へ行くのはさらに難しかっただろうなと。生きているからこそ確実に影響しあっているのを感じる。
二度結婚をして二度刑務所で離婚している川崎。刑務所を出て繋がりを持てたとしても再び刑務所に戻ってしまう。それくらい現実は厳しいのだから犯罪者である剛志の歩み出す道は苦しい険しいはず。ひとつひとつ糸を掴んで大切にしていってくださいと案じてしまう。刑務所では現実を考えなくていい、それが逃げ道にならないように関わっていくことを考えていかなければならないなとも思います。
上司から仕事を押し付けられ、三日間不眠で働き居眠り運転で亡くなった父。その早すぎる死の理由を学歴がなかったからと捉えていた母。勉強が苦手だった剛志は母の期待に応えられず、現実から逃避出来る道を探した末、カツアゲ未遂で捕まってしまう。その翌朝、母は過労で亡くなる。
「俺がバイトすりゃあ、お袋だってもうちょっと楽ができるのにさ」
剛志は家族を思って新聞配達をしようとしたのに母にそんな時間があるなら勉強しろと止められている。家族を思っているから剛志は行動したくて、望まれた通りに出来ず辛くて…しんどく歯痒い中の直貴は希望の光だったんだろう。勉強じゃなくても技術を身に付けるとか剛志に向いていることをお母さんと一緒に考える時間・余裕があったなら…と小説から思ってました。
刑務所でのごめんなさいは緒方さんだけでなくお母さんへのごめんなさいもあるのかもしれない。直貴に殴られながらも無抵抗だった剛志の感情含めて心に残ってしまう。
直貴にとって生きるのは家族を守るため、幸せなのは家族との時間や音楽とは言えるかと思う。どちらも自分自身で選択している。対して剛志は弟を大学へ行かせるため生きて、幸せは過去の記憶と直貴の幸せ。自分のために自分で選んだ選択はあまり無さそうだし、自分で努力できる範囲を越えて直貴に依存している。新しく出会う人との糸を一つ一つ手にとって繋いでいってほしい。剛志自らが生きる喜び、心ときめく何かに出会えますよう願います。
なにが君の しあわせ なにをして よろこぶ
アンパンマン(やなせたかしさん)に学ぶ生まれてきた意味と心の健康(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース
spiさんの剛志について
仮面を着けるように役をまとわせる演者さん、全体を俯瞰してそこにあるべき姿である演者さん、自分に役を近づける演者さんなどなど演者さんの人数だけ色々いらっしゃるのではないかと思います。どんな演じ方にせよ舞台に立っているその瞬間の感情が演じられたものではなくて嘘のない感情だと嬉しい。分かるのか?と言われたら自信なくなるのでふんわり許して欲しい(笑)
ミュージカル「手紙」が日常と地続き、現実を写す鏡のような舞台だからかspiさんの剛志はそのままふらっとやってきたような自然さ。今は明確に言葉に出来ないけれど多分もう少し後になって"だからspiさんが好きなんだな"と感じるのでは?と予感してます。
「強盗殺人」そう言葉で聞けば同情の余地のない罪。ただ剛志を見ていると川崎の言うようにとても罪を犯すような人間には見えない。段々と手紙を通して剛志が知るべきこと、学ぶべきことを得ていく様子を見ると罪を犯す背景も感じられます。spiさんの舞台映えする大きな身体はどちらかといえば罪を犯しそうな印象が強くなりそうな気がします。それなのに直貴が言うようにたぶん罪を犯すような人じゃない、優しい人なのに、と思う。それは純粋に見えるからなのかもしれない。
意志がはっきりと届く声からふわりと心地良く穢れのない声まで場面により異なって相対的な印象に作用しているように感じます。舞台映えする存在で綺麗な歌声が魅力的なspiさん。全てが生きてくる剛志は見たいspiさんのお姿で見られて幸運だと思いました!…ただこの役は長期で向き合うには心が削られるような役だと感じます。JCSくらい削られそう。
- ずっと探してたのだけど緒方さんが剛志から届く手紙のことを「これは彼にとっての般若心経なのだとね。」と表していました。この印象がとても強くて「一文字一文字」手紙を書く剛志の研ぎ澄まされた思いの強さを観て考えます。
- 途中歯磨きしてるとこ、ジパオペ思い出す⏰🐶
- 剛志はしきりに「緒方さんの墓参りどうなった?」と聞きます。前山繁和のお母さんが「ご不快でしたら」と発したことでこの気持ちが剛志には想像出来ていなかったのだと(三重奏でも言葉にはしているけれどより)腑におちた瞬間でした。墓参りをしようとしても拒まれる可能性、直貴が代わりに墓参りをするにあたってどんな気持ちになるか、申し出られた緒方さんたちがどんな気持ちになるか、想定しているだろうか。「せめて気持ちだけでも伝えたくて」と告白する人のよう。
ユートピアも、ディストピアも見つめる先は現実社会
イマジンの内容を直貴は"ユートピア"と表す。この場合の理想郷は曖昧な世界だろうけれど具体的にユートピアを作ろうとした一例が田園都市。現実にある理想郷・田園調布に住む朝美でもイマジンの世界に暮らすとは言い難い。現実との解離を感じる。
イギリスのトマス=モアの著書
1516年刊。題名はモアの造語で,ギリシア語で「ない」という意味の「ユー」と,「場所」という意味の「トポス」から成り立っている。モアは『ユートピア』において,国家が悪い状態にあるのは何によるかを示すために,仮空の島にある理想国家と人間の理想的社会生活とを描いた。中でも牧羊のための囲い込みを批判した,「羊が人間を喰 (くら) う」という語句は有名。
日本でも渋沢栄一らが田園都市株式会社を設立し、田園調布駅を中心とした田園都市の開発を行なったほか、阪急電鉄の小林一三は、千里山などいくつもの田園都市の開発に力を注いだ。
イマジンでのユートピアにあたる場所を私はよくWSSのSomewhereとして思い出します。自分たちを許してくれる場所を探す、と聞くとトニーが浮かぶから平野の甘えだという指摘も素直に受け入れられます。
「差別しなきゃならない」について小説では以下のように書かれています。ここが私はとても好き。
"犯罪者の家族もまた被害者なんだから広い心で受け入れてやらねばならない、"
"君に対してどう接すればいいのか、皆が困ったのだよ。本当は関わり合いになりたくない。しかし露骨にそれを態度に示すのは道徳に反することだと思っている。だから必要以上に気を遣って接することになる。逆差別という言葉があるが、まさにそれだ"
もし直貴の周囲に自分がいたとしたらどう思うかを考えるとこの逆差別にあたる気がします。だからこそしばらく答えは出なさそうですが考えていきたい。そして勿論周囲にいて関わる以外にも様々な可能性はあるのだから合わせて考えたい。
逆ユートピアとは - コトバンク (kotobank.jp)
音楽感想
- 冒頭、出だしの音はアコーディオンだろうか?アコーディオンだとしたらなだらかに寄り添うような音色。一幕、二幕始まり共に幕なし、暗転なし、現実と舞台の境目があえて曖昧になるようになっているのとても好きです!
- 緒方さん、剛志、直貴の三重奏(事件を終わりにする場面)のギターってイマジンだろうか??そうかもと思ったけど全然違うかもしれない。
- カテコでの演奏、ギターが聞き馴染みある感じ(Starlight Express?)だなぁと聞いてる🎸動画はギターが聞けるわけではないからアンマスクドのに似てると思うのかも。手紙のエレキギターの感じをなんと言えばいいのか分からないけれど好き。
演者さん感想
- 前回は前方席だったからもう一度確かめてから…と思ってたんですけど三浦透子さんの歌、言葉を区切ってはっきり発音するわけではないのに何を話して・歌っているのか明確に分かるの不思議!!全体で見ても際立って透き通った歌声だから直貴が持つ既存の考えを打ち破ってくれる存在なのだと分かる。
- ライブシーンの村井さん直貴、純粋にライブを楽しんでユースケに向かってチケットを振ったり、ベースソロで興奮しててめちゃくちゃかわいい🙈
- 前回も同じこと感じたんですがスペシウムが事実上解散して一人ベースを弾くユースケを見ると悲しく寂しくなる。ベースって一人で弾いても楽しい楽器じゃないと私は思う。誰かを支えて、誰かと演奏してこそ楽しい楽器だと思うから。
- 直貴の住所を梅村教諭から聞き出した剛志に川崎が諭す場面、川崎の言いたいことに肩入れする佐々木さん演じる囚人を一瞥し僅かに首を振って止める安里。あの場にいる囚人たち思いは同じだろうに冷静に見えて複雑な心境なのだろうなと。
本日もご来場ありがとうございました!明日は13:00〜📨
— 染谷洸太 Kota Someya (@someya_kota) 2022年3月20日
2017年と衣装も大きく変わりました。時代背景、サイズ感など、一つ一つ本当に拘り抜いたものを着用してます。
衣装さんたちの作品への愛を感じながら舞台に立ってます。僕の囚人役は安里悟といいます。
よろしくお願いします。#ミュージカル手紙 pic.twitter.com/DAylY9rGVq
- 7men侍の皆さん、舞台慣れされてるし多才なんだなぁと思う舞台でもありました。ジャニーズの方はテレビでいきなり企画に臨んで結果を残すイメージがあります。ああいうのって普段の基礎が出来ているから出来るのだろうなと常々思うところです。初めてでもアドリブする余裕があるのさすがすぎました。スペシウムの場面、直貴が見に行ったliveのドラムが強めだったのしか覚えていなかったから次第にスペシウムの演奏が変わっていってるんだな~と知れて良かったです!
仕事、働くについて
- 新星電機ナンバー、パッと見た川口さんの足が綺麗に上がってた気がしてえ??と思ったけど雄二さんのこと考えると出来てもおかしくない気もするし、見たと思ってるものが本当かめちゃくちゃ気になる。
- 「うちは流通システムが生命線だからね、倉庫の仕事は重要なんだ(小説より)」平野が言うように大切な仕事のひとつであることに間違いない。リサイクル会社も、新星電機の物流部も直貴が納得いかないの、なんか勿体ないなと感じちゃう。目標は高くもって上を目指していくのは大切だけど、自分が不当だと思うのは周りを下げて自分を上げて物事を見ているのもあるのでは?自分と周囲が同じ場所に立っていること、周囲から学ぶことは大切な気がします。。
- あんまり詳しくないながらワープロとパソコンって同じなの?違うんじゃないの?と思ったやつ。ソフトが入ってる入ってないだけで売り場は同じ扱いだったのかな?ワープロとパソコン